5月12日(金) 全日プロ守口大会へ。
会場するや、先シリーズから現場復帰された和田京平レフェリーに挨拶した後、しばし雑談。負傷した足の具合はまだ本調子でないようで、「『チャンピオン・カーニバル』じゃなかったら復帰してなかったよ。俺がいないとって思って、無理しちゃった。まだ、ボンバーには任せられないからな」とのこと。
「ブランクがあるとスポーツ選手は試合勘が鈍るって言われますけど、レフェリーもそういうのってあるんですか?」と質問。
「それはないけど、動けないから(カウントを取り始めるのが)ちょっと遅れちゃうね。遠くでカバーされると特にね。『そんなとこでカバーするな!』って思うよ」とのこと。
全日プロとしては初開催の守口市民体育館。京平さんから、「ここって東京で例えたら、どの会場になるの?」と尋ねられたので、「そうですねえ……台東区体育館という感じですかね」と返す。京平さんもイメージできた様子で納得されていた。ちなみにここ、辰吉丈一郎がWBC世界バンタム級の王座を獲得した会場でもある。
その後、最近、鑑賞した昔の試合ビデオから、オープン選手権の話題に。会場の話題の流れから、「オープン選手権って、足立区体育館で開幕でしょ? あんな小さいところでよくやったよなあ……」と京平さん。旗揚げ当時の全日プロは国技館はほとんど使用せず。東京でのビッグマッチは日大講堂が常打ち会場。蔵前(国技館)を頻繁に使用するようになったのは、テリー・ファンクの人気が爆発してから。それでも年3回程度。「(日本)武道館なんて持ってのほかで、四天王で爆発してからだからね。よく(武道館で)年7回もやってたよなあ……」と話は続く。
そして、当時、来日していた外国人選手のエピソードとして、「ドン・レオ・ジョナサン? あれは凄いよ。あんな選手、今いたら、トップスターだよ。まあ、当時もそうだったけどね。あれほどの体で空中技も軽々こなしていたからね」「グラウンドで強かったのはパット・オコーナー。昔はグラウンドだけで10分っていう試合もあったからね。それを難なくこなしてしまう」「ホースト・ホフマン? やっぱりヨーロッパだから、ちょっとスタイルが違ってたよね。スタンドからラウンドに移るのに無駄がない」といった具合。
パット・オコーナーのうまさは有名で、あの口の悪いミスター・ヒトでさえ、「パット・オコーナーとはカンザスで3カ月ぐらい毎日闘った。そこでプロレスを教えてもらった」といったほど。そういうタイプのレスラー、今はもういないなあ……。
休憩前の第4試合、崔領二が諏訪魔のパンチを側頭部に浴びてダウン。そのまま試合終了のゴングが打ち鳴らされた。わずか1分38秒。互いのパートナーである青木篤志、岩本煌史は出番のないまま試合終了となった。
こめかみから出血している崔は担架で運ばれ、諏訪魔は右手をぶらぶらさせている。
バックステージを覗くと、大日本プロレスで負傷の対応には手慣れたものなのか、李日韓レフェリーが走り回っていた。救急隊が到着したころには崔の意識も戻っていたようで、若手に控室から荷物を持ってくるように指示を飛ばし、ゆっくりと上体を起こして救急隊の質問にもはっきり答えていた。そしてその場へ、諏訪魔が「ダメ」と右手を支えながら近づいてきた。
「諏訪魔がラリアットを放ったところ、かわしきれずにパンチがヒット……」と説明されたが、見ていた限り、その説明とは少し異なる。
序盤でよくみられるタックルの打ち合いから諏訪魔がロープに走った。直前のタックルでバランスを崩した崔が体勢を立て直す前に諏訪魔が帰ってきたので、タックルを受けるかどうか迷いが生じた。逆に諏訪魔は、まだ体制を整えてない崔の姿が目に飛び込んできた。そのままタックルでぶち当たっては危険と判断したのか、咄嗟に右腕を振り回した感じ。それを見て崔が、体制を低くしたがタイミングがワンテンポ遅れ、諏訪魔の拳が当たってしまった。それでこめかみあたりをカット。ラリアットなら拳をヒットさせるのではなく、ヒジの内側で打ち抜くはず。当たった瞬間の際は片ヒザを着いた状態。すぐに立ち上がろうとしたが、ワンテンポ遅れて背中からマットに倒れた。崩れ落ちた感じではなく、しっかり受け身を取りながら倒れたので、さほど危険には見えなかったが……。
試合直後には「諏訪魔のTKO勝ち」とアナウンスされたが、バックステージが一段落してから記者席に姿を見せた京平さんは、結果を確認してから、「ノーコンテストだよ。ボクシングでいう偶然のバッティングみたいなもんだから」。要するに、“序盤で偶然のバッティングによる試合続行不能”と同じ裁定が妥当というわけだ。
その後、セミファイナルが行われている頃に、諏訪魔の診断結果(右第2、第3、第4中手骨不全骨折)が伝えられた。
メインはビッグガンズ(ゼウス&The Bodyguard)が若いジェイク・リー、野村直矢相手に世界タッグ王座防衛。全日プロは若い長身の選手が多く、正面からぶつかる闘いを繰り広げているので見ごたえがある。と同時に、秋山準社長が馬場さんから教わったことをしっかり伝えているのが、試合から見てとれた。
一方で、アクシデントが生じたのがインターミッション前とあって、後半戦の舞台裏がピリピリしていたのが印象に残った。