11月13日(火) 元西鉄ライオンズ投手、“鉄腕”稲尾和久氏が亡くなった。通算276勝。1993年に殿堂入りしたレジェンド。日本シリーズ4連投4連勝という不滅の記録を残した怪童である。しかもそのシリーズの西鉄は巨人相手に3連敗4連勝で、稲尾の投手成績は4勝2敗。7戦中6戦の勝敗に絡んだ投手はほかにいない。それだけでなく第5戦では自らさよならホームランを打って勝利を決めた。58年のG戦士は「稲尾1人にやられた」と振り返る。
“天才”長嶋茂雄と対決した日本シリーズ。ボールをリリースする直前に長嶋がどのコースを狙っているかを見極めて、ストレートの握りのまま、外角狙いならシュートを、内角狙いならスラーダーを投げた。それができるのも怪物だが、それで長嶋を完璧に抑えたというのだから、またもや驚き。
年間42勝。今後、この記録を破る投手は出てこないだろう。草野球でも出ないのではないか? ほかにもシーズン20連勝、3年連続30勝という信じられない記録も。日本シリーズ通算11勝も記録なら、58年の日本シリーズでは1人で47イニングも投げている。
肩を故障するまでの8年間に限れば、234勝92敗。実に勝率.717、防御率2.07(生涯防御率1.98)。
まさに不滅の大記録。監督もよく、そこまで稲尾を使ったものだ。よほど体が頑丈だったのだろう。小学生時代に家業(漁師)を手伝い。毎日のように櫓をこいで海に出ていた稲尾少年。生活の中で知らず知らずのうちに体が鍛えられていた。別府湾の荒波にあおられ、不安定な足場で櫓をこぐことによって柔軟な筋肉がついただけでなく、バランス感覚も養われた。それが“鉄腕”の原点。それは稲尾氏自身が語っている。
「神様、仏様、稲尾様」という名言を生んだ大投手。
そういえば今年7月にはプロレスの神様も亡くなった。ある意味で2007年はプロスポーツ界の大きな節目となるのだろうか…。