猪木の新団体IGFの旗揚げ戦が目前に迫ってきた。しかし、6・29両国のリング内への関心は一向に高まらない。カードが決まっていないのもあるだろうが、レスナー、アングル、小川、バーネットでは「アッ、そう……」という感じ。そこに期待感、高揚感がない。何となく、「ビッグネームを揃えれば客が集まるだろう」という考えが見えてしまう。
猪木新団体に期待する部分は何か? それはニューヒーローの誕生にほかならない。閉塞気味のプロレス界をブチ破る存在が必要なのだ。それは既存の団体では不可能に近い。未知数の超新星が現れない限り、プロレス復興はおぼつかない。その超新星に闘魂のエッセンスが注入されていれば最高だ。
前記4選手はすでにプロレス・格闘技界でスターの座に位置する。フレッシュ感は全くない。レスナーvsアングルなら及第点のファイトにはなるだろうが、そこに枠を超えた破天荒なシーンは見られそうにない。バーネットが絡むと格闘技色が強くなってしまうので“プロレス復興”といったムードは感じられないだろう。小川は……期待する方が無理。
現役時代の猪木の魅力はどこにあったのか? ファンそれぞれの意見があるだろうが、個人的にはあの眼だったと思う。「眼光鋭い闘う眼」というより、「人を引き込んでしまう眼」。カツで「ワールドプロレスリング」のオープンニングタイトルの最初にアップになったあの眼を思い出していただければわかりやすいと思う。
しかも、大会場の最後列にいても、あの眼には引き込まれた。もちろん当時はビジョンなんてない。実際にはどのような表情なのかハッキリわからないのだが、リングを見つめるとあの眼に射抜かれたような気分になり、猪木の闘いに吸い込まれていったものだ。
現在、相手だけでなくファンまでもに着込む眼力を持つレスラーは不在。華麗な動きで沸かせるレスラーはいても、幅わずか3センチほどの小さな点二つで1万人以上を引きつけるスターは後にも先にも猪木だけだろう。
そんな猪木も引退してからはあの眼を見せることはなくなった。一瞬、その片鱗が見られることはあるが、そこに内面から沸き上がってくるさまざまな感情は宿っていない。闘う者の怒りの眼ではないのだ。
さてIGF。眼で殺されるファンはどれだけいるか……。